毎年7月から9月にかけては、労働組合の人事が行われることが多く、自分が所属している労組も例外ではない。
その人事で、所属している労組(企業内組合)に加えて、上部団体である産別労組直属の個人加盟労組の執行委員を引き受けることになった。一般にオルグ加盟と呼ばれる、活動支援のためで、私は今いる会社の組合にも所属しているので、これで2つの組合に所属する「二重加盟」になる。
先日、その個人加盟組合の定期大会があって、その大会終了後、あいさつもかねて交流会に参加した。その席上である組合員が「もうカップヌードルも食えなくなるかも」と切り出した話が強く印象に残った。
その個人加盟組合には、正社員のほかに、派遣や契約社員、アルバイト、「請負」などさまざまな職種の人たちが集まっている。そういう構成もあってか、年収300万円前後という人もすくなくない。話の彼もその層に属しており、カップヌードルの話の直前まで、インフレがいかに生活を苦しくするかということを強く語っていた。300万円でもなんとか生活していられるのは、デフレで物価が安い水準であったことのおかげでもある、という。だから、インフレで物価が1?2%上がっただけで、今まで買えたものが買えなくなってしまう。先日の「カップヌードル値上げ」(from 共同通信 on 47 News 2007.09.05)のニュースを聞いて、「もうカップヌードルも食べられなくなるかもね」と奥さんと話したとも言っていた。そんな思いにさせられるようなニュースだったと言う。
少し前のマヨネーズの値上げに続き、17年ぶりの「カップヌードル」の値上げ。来年1月から、レギュラーサイズのカップヌードルが15円、「チキンラーメン」は10円の値上げになる。
値上げは小麦など原材料価格の上昇が主な要因とされている。上昇分を吸収しきれなくなってきたという理由なのだろう。
1個あたり10~15円の値上げである。一見、大したことのないように思える。
しかし一方で、ここ数年で雇用の流動化が一気に進み、正規雇用労働者が大きく減り、非正規雇用労働者が大幅に増えたことで、賃金のダンピングが加速度的に進んでいる。年収が300万円あれば良い方で、200万円台やそれ以下という人も増えつつある。そういう人たちにとっての「10円の値上げ」がどれだけの衝撃なのか。先の彼の話にその重大な事態の一端を見たように感じた。
そして翌日、その彼の話の重さを改めて感じさせることがあった。
新宿に用があって妻と子供と三人で出かけたのだが、直前に妻が産休に入り、ちょうどそれにあわせるかのように彼女の通勤定期の期限が切れたので、彼女は電車に乗る前にパスモ(PASMO)にお金をチャージをした。
電車に乗った後で、彼女はしみじみ「電車乗るにもお金がいるのよね」とつぶやいた。
この日はバスに乗ったりもしたので、往復で1000円近くの交通費がかかった。私は途中まで定期があったので彼女の3分の2ぐらいで済んだが、こうした休日のちょっとした移動にも、数百円から1000円の費用がかかることに、改めて気づかされた。
先の彼のように、10円の値上げに大きなプレッシャーを感じる人たちにとって、交通機関を使った移動に毎回数百円かかることが、どれだけの重しになっているのだろう。妻の一言に、そんなことを考えた。
その数百円のために「移動の自由」にさえ難儀する人々がいる。そして10円15円の値上げのために、カップヌードルを食べることをやめようかを考える人たちがいる。
思えば、なかなか目立たないけど、さまざまなところで最近小額の値上げが続いているような気がする。
今年はじめだったか、公衆電話網維持のために、すべての電話の1契約ごとに7円のユニバーサルサービス料がかかるようになった。マヨネーズを10円ばかりか値上げされた。このほかにもいつの間にか少しばかり値上げになっているものがあるかも知れないし、今後値上げされるものもたぶん出てくるだろう。ひとつひとつは小さくても、確実に負担は上乗せされ、生活を真綿で首を締め上げるがごとく少しずつ圧迫してくる。
そう考えると、先ごろ実施された定率減税の廃止がいかに酷いものかが改めて感じられる。財政再建や福祉充実を名目に取りざたされている消費税の税率アップがどれだけとんでもないものか。税率が数%上がることの「重み」はいかほどか。
こうやって生活の範囲がどんどん圧縮されて、それに応じてささやかな「自由」も、事実上制約されていく。
この負担に耐えられるひとはまだいい。限界ぎりぎりで生活している人たちにとっては、こういう小さな負担増の積み重ねは、最後の支えにじわじわダメージを与えているようなものだろう。
先の参院選の与党大敗で、とりあえず消費税率のアップは先送りされるかもしれない。先の彼はこうも言った。「民主党には何も期待していない。しかし、民主党が大勝し、与野党逆転したことは、生活を守るための千載一遇のチャンスを作った」。
「ここで動かないでいつ動くのか」最後に彼はそう言った。
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