解散総選挙2:民主党は本当に小泉政権と対決する気があるのか、だれか教えてくれ!

 おかげさまでこの8月は、仕事はあまり忙しくないのですが、どうもプライベートが忙しく、なかなかエントリーを書く時間がありませんでした。
 そんな状況でも、選挙関連のニュースはできる範囲でチェックし、いろんな人のサイトも読んだりしていましたが、そうしているうちに、ひとつの大きな疑問が沸いてきました。
 それは「民主党は本当に小泉政権と対決する気があるのか」という疑問です。

 それを強く思ったのは、小泉首相に岡田民主党代表が1対1の討論を要求した(民主・岡田氏 首相に討論要求 from 東京新聞 2005.8.21)ということを聞いたからです。

 今回の衆議院議員総選挙は、小泉政権を倒す大きなチャンスと捉えている人は少なくないでしょう。異論を持つ人たちを強引に排除して、選挙を通じて自分を支持する勢力を拡大しようとする手法は、かつてアドルフ・ヒトラーがとった手法とそっくりです。そんな小泉首相を引きずり下ろすには、この選挙によって自民・公明連立政権を過半数割れに追い込むのがいいというのは、小泉政権を支持しない人たちにとって、概ね共有できる認識だと思います。もちろん私もそう思っています。
 現状の日本はあまりに多岐にわたって問題を抱えていますが、それに対処するには、政治の転換が必要であり、そのためには現政権を退陣させることが、現段階での最良の方法(唯一ではない)だろうと思います。そしてそういう状況を作るには、野党勢力の結集ないしは協力が必要だろうとも思います。

 さて、以上の状況認識を前提に、民主党の政権公約(マニフェスト)や、最近の動き・幹部の発言などを見ていると、なんかピントがずれているように感じて、本当にこれで選挙に勝つつもりなのだろうか、政権を取るつもりなのだろうかと、ついつい感じてしまいます。

 民主党が過半数を取れるのかというと、今回の総選挙では不透明な要素が多くて、はっきり言ってどう転ぶかわからない状況にあると思います。より確実に小泉政権を倒そうというなら、今回は反小泉勢力を積極的に結集することが重要かと思います。
 が、しかし。同党は、解散直後から今度の総選挙で単独過半数をとり政権を、と言ってしまっています。
 本当に確実に現状を変えよう、もしくはその転換点をしっかり作るというのなら、一致できる点で野党勢力の協力を求めるのが筋かと思いますが、初めから「単独過半数=単独政権」と言ってしまっては、協力できる素地をみずから壊しているのと同じです。

 そして政権公約(マニフェスト)でも、野党勢力の協力の余地をなくすようなことを打ち出しています。
 民主党は、「8つの約束」のトップに「衆院定数80削減、議員年金廃止、国家公務員人件費の二割削減などで三年間で十兆円の歳出削減」を掲げています。私は、議員年金の廃止ないし削減や国家公務員の人件費削減には、条件つきながらやるべきことはあると思っていますが、よりによって「衆院定数80削減」を一番最初に持ってきているのが、ダメダメだなあと思うのです。
 この衆議院定数80削減がなぜダメか。比例定数を80削減するとしているからダメなのです(「民主党 日本刷新 8つの約束」の1の詳細)。少数勢力の息の根を止めるような比例定数の削減を掲げておいて、野党他党派の協力を得られるとでも思っているのか。自民党の対抗は何がなんでも我々だ、という流れにもっていこうとする傲慢さが現れていると思うのです。
 実際、国会議員を減らしたところで、実際どれだけの節税効果があるのか、危機的な国家財政からみればたいしたことはありません。むしろ、定数が減ることによって国会議員一人あたりの権限がさらに拡大して、企業や圧力団体等との「癒着」の余地が増えることのマイナスのほうが大きいと思います。権限が集中すれば、そこに取り入ろうという人間も増えることになるでしょうから。だから、議員定数はむしろ増やしたほうがよい、というのが私の考えです。

 さらに、前掲の記事にあるとおり、小泉首相との1対1の討論要求をしています。他党派をないもののごとく扱うこのような振る舞いは、これも民主党の傲慢さを示すものとなってしまいました。「政党は民主党だけじゃない。他の党に失礼でしょ」という小泉首相の対応(自民、党首討論を拒否 「逃げるな」と民主反発 from 河北新報 2005.8.25)は、この件においては至極まっとうでしょう。
 「郵政民営化の是非」だけを打ち出す小泉首相に対し、討論を通じて「自民党か民主党か」を迫ろうとする民主党。むりやり二項対立の構図に持ちこもうとする点は、小泉自民党と民主党はそっくりと言わざるをえません。政策自体似通っているこの両党は、皮肉にも、違いを出すためにとる手法まで似てくるものなのでしょうか。
 
 こんな振る舞いをしておいて、本当に単独過半数が取れるとでも思っているのでしょうか。民主党は自分で勝手に不利な状況を作っているようにしか見えません。もしかして、小泉政権と対決姿勢を強調しつつ、妙な振る舞いで自滅することで小泉政権の延命を図るという、実は最大の小泉補完勢力に成り下がったか、と天の邪鬼にも見てしまいます。まあ、国会で小泉首相に「改革の中身はいい。だがやり方はまずい」というような発言もしてしまうほどに政策の似通っている両党ですから、そう勘繰ってしまうのも仕方ないことなのかもしれませんが。

 今回の選挙の最大の争点は、現状を打開するためには小泉政権を継続するのがいいのか悪いのか、という点になっていくでしょう。小泉首相は郵政問題一本で行くつもりでしょうが、公示前の前哨戦の中で、4年間の小泉政権をどう評価するかという点に争点の中心が移りつつあるように思います。
 となれば、ここは本筋に戻って、小泉おろしのために本気で反小泉勢力の結集を図ることが大事ではないでしょうか。役に立たない「単独過半数」などという目標は早く取り下げ、小泉政権の4年間を正面から徹底的に批判していくことで、反小泉勢力を結集して過半数を制するという戦略を取るべきだと思うのですが。
 そうでなければ、たとえば大半の小選挙区に候補を立てる共産党を説得することは難しいでしょう。「オレが政権を取るために協力しろ」と言われて「ハイ」という勢力がどこにあるか。自民党郵政造反組がはっきり一つにまとまれなかったのは、民主党が「単独過半数」という目標をこだわり、反小泉という明確な結集軸が作れなかったことによるのではないか、とさえ思うのです。もしかすると、民主党が「単独過半数」にこだわっているかぎり、小泉首相はこの選挙には負けないと思っているかもしれません。

 またこの選挙では、この選挙で小泉政権の退陣をと考える人たちから、共産党が大半の小選挙区に候補を立てることに対しての批判も少なくありません。私も、もう少し絞りこんでもいいのではとも思いますし、たとえば独自の対応として公明党の候補者のいる選挙区は立てないぐらいの独自の対応はあってもいいかな、とも思います。しかし、候補を絞りこむうえで、やっぱりネックになるのは民主党のスタンスでしょう。「他の党はいらない、生き残りたいなら協力しろ」というような立場を民主党が取るかぎり、暫定的な協力を行う余地さえまずないのは自明です。

 この現状の国政を転換するためには、反小泉勢力の結集・協力がぜひとも必要です。それには、実は民主党の「単独政権」志向の転換が必要なのではないでしょうか(少なくとも今回の総選挙において、ですが)。なぜ、田中康夫長野県知事が「新党日本」の結成に動いたか。民主党の選挙での重点の置き方に、遠因があるような気がしてなりません。

 残念ながら、今は次の政権の枠組みをどうするか、ということを考える状況にはないと思っています。それは小泉政権を倒してからの話でしょうし、当面はごちゃごちゃせざるをえないでしょう。今回の総選挙では、この小泉政権の4年間を徹底的に批判することを最重点にすべきだと思うのです。

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