小泉自民党の「争点は郵政の賛否」一本槍作戦に反して、いろいろなテーマが争点になりつつあるように感じる今日このごろ。思いつきでいろいろ書いているだけじゃまとまらないので、自分なりに争点をまとめてみようかと思います。
で、その争点とは、結局これにつきるというほかないのですが、80年代の英サッチャー政権、米レーガン政権の亜流、というより劣化コピーというべき日本型「新自由主義」的政策の是非であると思います。
「小さな政府」や「規制緩和」、「官から民へ」などいろいろ言われていますが、結局、治安や国防など一部の事業をのぞいて、国家がおこなう事業はできるだけ小さくして、あとは市場にすべてをゆだねるというのが新自由主義の考え方です。そうするためには、規制はできるだけなくして、市場に参加するプレーヤーの行動をじゃましないようにする必要があります。
その観点からみれば、まさに郵便貯金という巨大な国営金融機関は、市場をじゃまする官製サービスに他ならないわけで、そこから小泉政権が「郵政民営化」に突っ走る動機も見えてきます。実は公社であれば黒字が続くとか、独立採算で税金を使ってないことなどメじゃない。国家がそういう事業をやっていること自体、市場にすべて任せるという方針に矛盾するわけですから。民営化したことのデメリットも、市場がいずれ自動的に調整すると考えるのが新自由主義の考え方ですから、「痛みに耐えればいずれよくなる」と言ってしまえるわけです。
で、その市場側のプレーヤーとはいったい誰か? 小泉政権は「官から民へ」というスローガンを使っていますが、ここで使われている「民」がおそらくそうなのでしょう。その「民」とやらはいったい具体的に誰のことを指しているのか。それは市場に参加している企業群です。この企業群は、当然といえば当然ですが日本国籍の企業だけでなく、外資系企業も入ってきます。外資系を排除した市場など作れるわけもありませんからね。
結局、郵政民営化の実態は、日本政府が税金を使って営々と運営してきた国民の資産を、世界中の企業が儲け競争に凌ぎをけずる市場に提供するということにあるわけです。
そんなことをして、日本の国民になにかメリットがあるのか? 競争には、勝つ場合と負ける場合もあります。郵貯に預けてある生活のための大切な資金を、勝つか負けるかの場にさらすことが本当にいいことなのか? それを考えなければなりません。
そして郵貯だけではありません。いま国や自治体が行っている社会保障サービスが、すべて市場を通じて提供されることになったとしたら、いったいどういうことが起きるか。税金でまかなっていたことが、営利事業の一環として提供されるようになると、それを購入するための資金が必要になりますが、ただでさえ持つ者と持たざるものの格差が拡大している中で、果たして必要かつ十分な資金をすべての国民が得られるのか? とてもそうとは思えません。
すでに、新自由主義的政策を推進した結果が、いろいろな面で現れています。自殺者の増加、失業率の高止まり、特に若年層の就職できない状況が深刻化している現状など。まだまだいろいろありますが、それらを見ていると、新自由主義的政策を推進してきた小泉政権の4年余で、日本の社会が急速に劣化してきたとしか思えないのです。
となると、今度の総選挙で問われるべきは、こういう新自由主義的政策がもたらした結果をどう評価するか、今後もこの政策を続けるかどうかでなければならないでしょう。要するに、政策の転換を求めるか否かにつきると思うのです。
昨年の参議院選挙の時にも、私は同様のことを書きました。経済政策も社会政策も外交政策もなにもかもすべてにおいて、根本的な政策の転換を求めるか否か。問われているのはそこであって、誰に政権を任せるかという「政権交代」は、その次以降の課題でしかないと思うのです。
私としては、新自由主義的な政策は、国民に格差を生み、活力を失わせ、社会を劣化させると思っているので、そういう政策を取る現政権与党は支持しません。
じゃあ野党第1党の民主党か。でも同党の政権公約は、基本的に新自由主義的で、案件によっては現政権よりも新自由主義的なものもあります。これで、政策転換に期待できるか、というと、昨年参院選の時に書いたように、とても期待はできません。
では、新自由主義的でない勢力はいかばかりか、と考えると、これまたすぐに政権をになう力量には、残念ながらありません。がしかし、新自由主義的政策を掲げる勢力に対するアンチとして支持することに意味があるかと思います。
新自由主義に反対する人ならば、少なくとも現政権には退陣してもらうことが肝要でしょう。と、同時に、新自由主義的政策からの転換の道筋もつけておきたいとも思うのです。そう考えるならば、投票先は少なくとも野党候補、小選挙区なら民主党が中心になるでしょうが、比例代表は自分が考えていることに一番近い政策を掲げる野党にきちんと投票することになるでしょう。
参院選と違って、衆院選は政権を選ぶという面もあります。が、私にとっては、新自由主義にかわる強力なオルタナティブがないというシンドイ状況では、望みうる政権の枠組みが想像できません。よって、どのような政党の組み合わせであっても、安定した政権はつくれない、という不安定な構成(200議席をこえる政党が無く、少数政党が20?30程度で乱立するような)になるのが、現状で望みうる最良の結果と考えています。
いずれにしても投票まであとわずか。後悔しない選択をしたいと思います。
コメントする