情けないことに、イラクでの人質事件についてウェブで情報を見ているうちに気持ち悪くなってしまい、数日間ウェブから離れざるをえない状態になってしまった。
人質となってしまった人たちへのあまりに酷い誹謗中傷の書き込みを見ているうちに、胃が締めつけられるような感じになってしまった。そして、それが数日間続く。同時期に特にプレッシャーのかかる仕事や出来事があったわけではないので、おそらく「ウェブでの世論」が主な要因だったかもしれない。
思うに軽いショックを受けてしまったのだと思う。この数日間は生活も仕事も普通にできているのに、パソコンを操作するときだけ胃が締めつけられるのだから。ようやく調子が落ち着いたのは、田舎へ行って帰ってきた昨日になってのことだ。なんとも情けないが、現時点での自分の強さ弱さを再確認した格好になった。
そうやって調子を落としている間に、イラクでの人質たちは無事解放された。まずはそのことを素直に喜びたい。日本と世界の救出に向けた動きが、そしてなにより人質となった彼ら自身の活動の方向性と実績が、彼らを救ったのだと思う。
捉えている人間が敵ではないと分かればきちんと解放する。政府と人民(国民)とを分けて考えている。推察するに、イラクの抵抗行動(この期におよび、もはや彼らの動きを「テロ」で一括りするわけにはいかない)が組織的なものになってきたのではないだろうか。実父が「ベトナム戦争の末期に似てきた」と言う。ベトナムの抵抗が組織的・機動的となって、アメリカ軍を追い出していった状況に似ているという。そうだとしたら、アメリカが今後取れる選択の余地はかなり限られたものになってきたと思う。つまり、追い込まれてきたのだ。
それにしても、今回のイラク人質事件は、日本人の知性のレベルを、これでもかと見せつけることとなった。人質救出を目指した一連の動きには、すばらしいものがあった一方で、被害者とその家族への誹謗中傷、傍観と無関心とそのあまりに酷い冷酷さという、どうしようもない一面をもあらわにした。「自作自演」から「大迷惑」「経済損失は○兆円」「自業自得」・・・といった直接的なものから、「テロに屈するな」「危険を承知で行ったのなら、死んでも仕方ない」などなど・・・人命を第一としないメンタリティーの醜さが、一気に出てきた観がある。
なんでこうなんだろう、と考えているうちに気づいたことがある。「自己責任」とか「テロに屈するな」などと言っている人たちの言い分にほぼ共通しているのが「他者への視点、他者からの視点」の決定的な欠落である。どこまで行っても、自分中心の視点が続き、その言い分が他者にどう受け止められるのか、他者からどう見られているのかという考えに至らない。
たとえば「いま自衛隊を撤退したら国際社会から見放される」というが、その国際社会が具体的になんなのか。実際に国際社会がどう見ているのか、という点には考慮がなされていない意見が多く目についた。「人質たちは日本の恥」みたいに扱っているが、その人質たちを、おそらく「国際社会」の一つであろうアメリカ政府のパウエル国務長官が「誇りに思うべき」(もちろん額面通りには受け取れないが)と発言し、フランスのル・モンド紙も「日本;高揚する人道主義」と題した記事を掲載するなど、好意的に評価していたりする。今のところ「国際社会」から聞こえてくるのは、彼らを評価する声はあっても、非難したり貶めたりする声はない(もちろん、できうるかぎりのメディアを見ての範囲だが)。
詰まる所、「枠をはみ出た行為」自体が許せないのではないか、と批判派の言説を見て思ってしまう(もちろん「枠」とはほぼ「政府」や「国家」を意味する)。「政府が危険だと言っているのに」などという意見を多く見かけるにあたり、半分本気でそう思い始めている。
せめてパウエルの言葉ぐらいのことを、日本政府の要人が言っていれば、政府や内閣への支持も高まっただろうに。支持率なんかにきゅうきゅうとしなくて済んだかも知れないのに。そんな皮肉にもならない皮肉の一つも言いたくなる。
なんだか、いろいろ書きたいことが溜まっているがまとまらない。まだ疲れは取れていないみたい。とりあえず、これからやるべきことはきちんと確認して、その取り組みを続けていきたい。
こんにちは。私はウェブから離れこそしませんでしたが、moony さんがお書きになったのと全く同じような心持ちでした。
私が弱音をはいた時、hana さんが「弱いんじゃない、弱くても立ち上がればいい、諦めないことが肝心だ」という言葉をかけてくださいましたが、本当にそうだと思います。
他者の視点への配慮のなさとか、「枠」のこと(いわゆる「出る杭は打たれる」というやつですよね)も、同感です。
コツコツ、ボチボチやっていきましょう!
うにさん、こんにちは。ありがとうございます。
こうやって励ましの言葉をいただくとほっとします。一時は「オレのほうが狂ってるのか?」と考えてしまう時もあったぐらいなので。
コツコツと地道にしっかりやっていくのが、今の私にはいいのかも知れませんが、一方で「のんびり構えている場合ではない」という急かす気持ちもあって、まだまだ気持ちが落ち着きません。
でも、とにかくいま出来ることをやっていくことが大事だから、無理せずにきちんとやっていきたいものですね。
改めて、ありがとうございました。ほんと、ぼちぼちがんばっていきましょう!