イラクで3邦人拉致 『自衛隊撤退せねば殺害』 from 東京新聞 2004.4.9
「テロとの戦い」を標榜して他国に軍隊を出したことが、「新たなテロ」を呼び起こし自国民を危機にさらす。以前からさまざまな非軍事的支援活動が積み上げてきた「日本への信頼」が、自衛隊派兵によってあっけなく崩されたとき、全土が戦闘状態であるイラクで何が起こるのか。このような「事件」が起きることは十分予見できたはずだ。
ブッシュに盲従した「テロ対策」は完全に失敗した。日本人からみれば「卑怯にも民間人をターゲットにしたテロリスト」だが、現地では「不当に自国を侵略した米英その他有志諸国に抵抗する英雄」と評価されている可能性もある。「要求に応じて自衛隊を撤退させれば、彼らは第2、第3のテロを起こす」との見方もあるが、だからといって、自衛隊をイラクに留まらせてもそれは同じこと。第2、第3の「抵抗行動」が起こるだろう。
もはやテロに屈する屈しないの話ではない。米英の始めたイラク侵略に追随して小泉政権のとったテロ対策そのものが根本的に間違っていたのだ。それが今回の邦人拉致事件を招いたのは明白だ。
「テロリストを利する」という批判があるが、それには自衛隊を米英「有志諸国」占領軍の一員として差し出していること自体、すでに「テロリストを利」していることがまだ分からないのか、と言いたい。この事件もその延長にある。いまさら「テロに屈するな」と言ってみたところで、それは無意味かつ逆効果である。
対策が間違っている以上、現時点で最優先すべきは人質となっている人間の救出であり、その手段としてもっとも有効なのは、「間違った対策に基づいて派兵された自衛隊の即時撤退」しかあり得ない。
それにしてもこの国には、なんと無責任かつ醜悪な傍観者が多いことか。メディアだけではないぞ。為政者に成り代わって、弾丸の飛んでこない安全地帯の高みから状況をもっともらしく解釈することに、どれほどの意味がある? 拘束された3人に対して「自己責任」とか「殺されてもしかたない」などと言うに至っては、ふさわしい言葉が見つからないくらいの怒りを感じる。人間軽視も甚だしい。事柄を自分で考えることの出来ない輩と決めつけても足りないくらいだ。心底、腹の底から軽蔑する。
「テロに屈するな」というなら、そういうお前たちがみずから銃をもって、今すぐイラクに行ってこい。あの国でいったい何が起こっているのか、その体にきざみこんで来い。自分が「死んでもしかたない」状況に置かれることが想像できないくだらない奴らには、体で分かってもらうしかない。
こういう事態に直面したとき、人間性というのは自ずから滲み出てくるものだとつくづく感じる。自らの「醜悪な体臭」に気付かないような人間にはならないようにしたい。
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